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「プルトニウム利用計画」についての見解

 
2006年1月10日

                       プルサーマルに反対する市民25団体

電力各社が公表したプルトニウム利用計画は絵に描いた餅であり、
六ヶ所再処理工場を動かせば余剰プルトニウムをさらに増大させることになる。
原子力委員会は自らの責任で直ちに「妥当性なし」と判断すべきである。
六ヶ所再処理工場のアクティブ試験を開始することはできない。




   
余剰プルトニウムは持たないとの国際公約と原子力委員会決定

 1月6日、電力各社は、2005年度と2006年度に六ヶ所再処理工場のアクティブ
試験(試運転)で分離されることになっているプルトニウムの利用計画を発表した。
原子力委員会は1991年に余剰プルトニウムを持たない原則を発表し、日本政府
は1997年には、IAEAに通知する形でこれを国際的に宣言している。今回の計画
発表は、その国際公約を担保するため、2003年8月5日付原子力委員会決定が
以下の措置を求めた事による。決定は 「電気事業者はプルトニウム利用計画を毎
年度プルトニウムの分離前に公表」  し 「原子力委員会は、その利用目的の妥当
性について確認」 し 「電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目
的(利用量、利用場所、利用開始時期、利用に要する期間のめど)を記載した利用
計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表する」 と定めている。

電力会社の計画は原子力委員会決定に従っていない

 プルトニウム利用計画は、原子力委員会決定の目的に照らせば、抽出されるプル
トニウムについて、いつ、どこで、いくら利用するのかを明らかにし、抽出した全てを
利用することが確認できるものでなければ意味がない。

 しかし今回の計画において電事連と電力各社は、2005年度と2006年度分のプ
ルトニウムの発生量1.6トン(核分裂性プルトニウム)とその割当量を明らかにした
だけである。 利用場所についても利用する時期や量についても、これを具体的に
示すことはできなかった。 今回の計画表は全く形式的なもので、六ヶ所再処理工
場のアクティブ試験を開始できるようにするために、形式的に表を埋めただけの絵
に描いた餅である。

 さらに、日本が国内外に既に保有している43トン以上のプルトニウムをどうするか
については全く明らかにされなかった。

 六ヶ所再処理工場を動かせば、余剰プルトニウムがさらに増大することは避けら
れず、これで六ヶ所再処理工場の試運転を正当化することはできない。

東京電力は原発の名前すら挙げることができなかった

 今回の計画で東京電力は、プルトニウムの「利用場所」について、「立地地域の皆
さまからの信頼回復に努めることを基本に、東京電力の原子力発電所の3~4基」
とするだけで、号機はおろか、原発名すら挙げることができなかった。 2つの原発
名と号機を挙げていた1997年2月の計画からみても後退している。 東電がこのよ
うに記載せざるをえなかったのは、新潟、福島の両県がプルサーマルの事前了解を
白紙撤回したからであり、近藤原子力委員長と東京電力に直接文書で懸念を伝えた
新潟県、知事が記者会見で「プルサーマルはありえない」と述べた福島県のプルサ
ーマル拒否の姿勢を無視できなかったからである。 その背景には、県民や地元住
民のプルサーマル反対の意思がある。 両県にしか原発のない東電にはプルトニウ
ムを利用する原子炉などどこにも存在しない。 この一点だけからでも、計画表が現
実離れした形だけのものであることは明らかである。

関西電力も具体的な計画を示せない状況にある

 関西電力は「高浜発電所3、4号機、大飯発電所1~2基」と記しているが、同時に
「現在、当社は平成16年8月に発生した美浜発電所3号機事故を受けて、事故の再
発防止対策と信頼回復を最優先に取り組んでいるところであるが、今後、MOX燃料
加工工場が操業を始める段階などの節目に際して、本計画を順次より詳細なものと
していく」 とも記載しており、現段階では具体的な計画を示すことができない現実を
吐露している。

九州電力を露骨に後押し地元に圧力をかける計画

 今回の計画では、2005年度に使われる使用済み核燃料15トンは全て九州電力
分となっている。 九州電力玄海3号機のプルサーマル計画には国の許可が下り、
現在地元の了解が焦点となっている。 玄海原発の地元や九州全域ではプルサー
マル反対の根強い声があり、佐賀県知事もいまだに了承していない。 九州電力の
再処理を優先させたこの計画は、知事への圧力であり、地元軽視に他ならない。 
九電にこのような計画を立てる権利はない。

姿形のない大間原発でのプルトニウム利用は机上の空論

 現在設置許可の審査中であり、まだ姿形のない大間原発が、利用年度等はない
まま、2005年度と2006年度で生み出されるプルトニウムの利用場所として挙げら
れている。 いつ建設されるともわからない大間原発に譲渡することで帳尻合わせを
行おうとしているが、机上の空論にすぎない。

他の電力についてもプルトニウムが利用される現実性はない

 北海道電力、東北電力、北陸電力は、地元への事前了解申し入れも未実施で、号
機を特定することはできなかった。 日本原電の場合は、プルサーマルの手続きが
全く進んでいないのに号機だけを従来どおり挙げている。 また、号機を特定し、事
前了解の申し入れを行った電力会社にしても、まだ地元の了解が得られているわけ
ではなく、今回発表された計画表の中に地元の了解が得られた計画は一つもない。

 原子力委員会は、利用目的の妥当性確認の判断のひとつとして、プルサーマル実
施に向けた地元との調整を挙げている。 このような現実を踏まえれば、利用計画の
妥当性は確認できるはずがない。

今回の計画は従来のものをそのまま写した机上の空論

 今回の計画が全く形式的なものであることは、従来のプルトニウム利用計画との
比較からも明らかになる。 従来の計画の基本は1997年2月に電力会社が発表し
たもので、海外で取り出されたプルトニウムを利用する2010年までの計画となって
いる。 計画の中身は、2000年までに4基 (関西電力2基、東京電力2基)、2000
年初頭に5基 (東京/中部/九州電力で各1基、原電で2基)、2010年までに7~
9基 (東京電力0~1基、関西電力1~2基、北海道/東北/北陸/中国/四国電
力および電源開発で各1基) でプルサーマルを実施するというもので、合計16~
18基となるが、ここに記された各社の基数は、今回の計画で各社が提示した基数と
まったく同じである。 今回の計画は海外ではなく、六ヶ所再処理工場で分離される
プルトニウムの利用計画である。 従来の計画を終えた後に実施されるべきもので
あり、従来の計画とは根本的に違うはずなのだが、その中身は1997年に公表した
海外分の利用計画の基数をそのまま写したものにすぎない。

利用開始時期は何も言っていないに等しい 

 プルトニウムの「利用開始時期」については、全ての電力会社が「平成24年度以
降」としている。 これは六ヶ所再処理工場に付属するように建設されるMOX燃料加
工工場が2012年度までは動く見込みが立たないことを言っているにすぎない。 結
局利用開始時期については何も言っていないに等しい。

利用量や利用期間も数字合わせに過ぎない

 プルトニウムの「利用量」及び「利用に要する期間の目途」についても、基数と出力
からおよその形式的な計算によって導いたものに過ぎない。

海外分の従来の計画すら進まないのが現実

 今回の計画は、日本が既に保有しているプルトニウムを無視している。日本のプル
トニウム在庫量は、余剰プルトニウムを持たないと国際的に宣言した後も増え続け、
2004年末現在では国内外合わせて43.1トン(海外37.4トン、国内5.7トン)に達し
ている。

 忘れてならないのは、東京電力が福島県や新潟県で拒否されている計画にしても、
関西電力が福井県にストップをかけられている計画にしても、問題となっているのは
六ヶ所再処理工場で取り出されるプルトニウムではなく、既に海外で取り出されたプ
ルトニウムを使う従来のプルサーマル計画だということである。 九州電力をはじめ
四国、中国、中部電力が地元に申し入れた計画にしても、まずは海外のプルトニウ
ムを使うことになっている。

 従来のプルサーマル計画はそもそも、高速増殖炉計画がうまくいかず、使い道の
ない分離済みプルトニウムを何とか消費しようとして出てきたものである。 その従来
の計画にしても、どの電力会社も開始できず、具体的な見通しが立っていないのが
現実である。 現段階で、今回のような利用計画を出し、さらにプルトニウムの分離
を進めようとすること自体矛盾している。 現実をみれば、六ヶ所再処理工場でこれ
から抽出するプルトニウムの利用など全く問題にならないことは明白である。

再処理をしない電力会社にもプルトニウムを割り当てる異常

 今回の計画では、両年度で再処理が予定されているのは、東電・関電・九電・日本
原電の4社のみである。 にもかかわらず、プルトニウムは全ての電力会社に割り当
てられている。 再処理しない電力会社にも、プルトニウム量を割り当てるのは異常
なことではないだろうか。 これによって、プルサーマル計画が全く進んでいない電力
会社にもプルトニウムを利用する責任を負わせ、プルサーマルの圧力をかけている
ようにもみえる。 いずれにしろ具体的な計画がないのだから、結局は余剰プルトニ
ウムにならざるをえない。

原子力委員会は「妥当性がない」と判断すべき

 プルトニウム利用計画の公表は、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験開始のため
であり、そのために従来の計画から形だけなぞって辻褄を合わせたものにすぎない。
このままアクティブ試験を強行すれば、そこで取り出されるプルトニウムがそのまま
余剰プルトニウムとなり、1997年に公的に表明した国際公約に反する状況が劇的
に悪化することは目に見えている。 原子力委員会は、自らの2003年8月5日付決
定に責任を持つためにも、アクティブ試験開始前に、電力各社のプルトニウム利用
計画には 「妥当性がない」 との判断を下すべきである。

                                               以上

<九州、福井、関西、新潟、福島、首都圏のプルサーマルに反対する市民(25団体)>