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『アサツユ』第178号(2006年6月10日発行)


 【告知】 7月東電交渉: 7月7日(金)午前10時 
                 福島第一原発サービスホール
 【主張】 東京電力は福島第一原発3号機の破損制御棒の
     未回収金属片を全量回収せよ!
 【報告】 <4月、5月東電交渉の記録>
     再循環系配管ひび割れ見逃し、制御棒破損問題
 【エッセイ】 ほんとの気持
       専門校時代(16) ※
 【エッセイ】 くぬぎ平たより
       第66回 真珠婚 ※

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  注記:2006年5月は発行しませんでした。




東京電力は福島第一原発3号機の
破損制御棒の未回収金属片を全量回収せよ!


 原子炉の心臓部で核燃料の反応をコントロールし、ブレーキの役を果たす
重要機材である制御棒の破損問題。

 福島第一原発3号機では、3月3日に5本の制御棒にひび割れが見つかり、
さらに破損と7センチ大の欠落部が発見されました。 3号機の場合、破損が
いつ発生したのかもわからず、東電は破損金属片を全量回収したと発表しま
したが、3月20日になって調査に誤りがあり未回収片があるとして調査して
いました。 東電によれば、シース部の欠損部の未回収部分は2個で、回収
作業で使用した装置から落下した可能性があるとし、当該装置が移動した
原子炉上部やシュラウド外周部、気水分離器等貯蔵プールなどや欠損部分
が発見された制御棒案内管内部の調査を行ったものの未回収部分が発見
できないため、未回収部分が原子炉内に残っている、としました。

 しかし、4月14日になって 「未回収部分は極めて小さく、軽量であることな
どから、これらの設備の健全性には影響を与えるものではない」「未回収部
分については、今後の定期検査等における設備点検の中で確認」 として、
未回収部分を残したまま運転を再開することを示唆しました。

 未回収部分を残したまま運転を再開すれば、金属片が燃料棒を傷つけた
り、制御棒駆動機構に入り込んだりする可能性が否定できず、原子炉の安
全上重大な問題です。 1989年の第二原発3号機の再循環ポンプ破損事
故時の未回収金属片100%回収という東電の約束はどうなったのか。 県
民の安全・安心の確保のため、事態の深刻さを踏まえ、破損制御棒の未回
収金属片を全量回収することを求めます。


<4月、5月東電交渉の記録>
再循環系配管ひび割れ見逃し、制御棒破損問題


 4月27日、福島第一原発サービスホールにて、申し入れ行動が行われま
した。 当日の質問事項と質疑内容の要点を、項目別に簡略に報告します。

<当日申し入れ事項>
● 福島第一原発3号機は、破損制御棒の未回収金属片を全量回収する
 こと。
● 福島第一原発3号機は、未回収部分を残したまま運転再開しないこと。

<当日質疑>
● 福島第二原発3号機の、ひび割れ見逃し事態により維持基準の前提が
 崩れた事を認めること


  東京電力は、原因として 「信号はあったが、同様の事例が過去に無かっ
 た為、溶接部の裏波と誤判断。溶接線不明確」 を挙げ、その対策を、溶
 接線詳細検査ほかの検査法 (二次クリーピング法) にて信号感知の場
 合は、社の内外の検査機関によるクロスチェックの実施や、事例集の作成
 と活用等としています。 ヒビの発見は、維持基準の根幹です。

  東京電力の対策をもってしても、今後新たな形態のひび割れが発生した
 時に、再度ひび割れ見落としが発生することは明らかです。 維持基準の
 適用による運転を止めさせる必要があると思いました。

● 制御棒破損-東京電力は破損部分を全量回収と誤判断した原因として、
 1) 当該制御棒案内管の内部に他の金属片が無かった、 2) 欠損部分
 と回収部分の形状が似ていた、と回答。 また運転継続の根拠として、未
 回収部分が軽量なので安全と判断した、とした。

  私たちは未回収部分の全量回収まで運転再開しないことを求め、また
 安全と判断した根拠の詳細を明示する事を合わせて求め、次回の回答と
 なりました。 その他、東京電力の放射線低減対策や労働過重問題等話し
 合われましたが、今回は上記2点に絞っての報告としました。
 
  いまだに東京電力が文書回答をしないため、1時間も回答の書き取りに
 費やす事態が続いています。 東京電力に文書による回答を求めました。
 この事によって、復水流量計及び原子炉流量計データ偽造と津波対策各
 問題に関する質疑はできませんでした。

***********
 5月25日の交渉について、今回も制御棒破損事故とひび割れ見逃しに絞
っての報告とします。

● 維持基準は信頼できない

  まず 「ひび割れ見逃し」 ですが、東京電力は、私たちの再三の「申し入
 れ」にも関わらず、「検査技術の向上に努める」「クロスチェック (東京電力
 以外の検査機関の併用) を行う」との言説に終始しています。

  これらの発言は、2002年に維持基準が原発のシュラウドに導入時以来
 なされてきたものです。 十年一日の様に前言を繰り返せば事足りるとする
 態度は、決して許されるものではありません。 また、県民の命に直接的か
 つ重大な関係のある「核施設」を運転する企業の、施設の安全管理に対し
 て責任のある発言とは決して言うことはできません。

  「核施設」=原発企業として、技術の向上に努めるのは当然の事です。
 超音波探傷技術は維持基準の根幹です。 しかし今回の「ひび割れ見逃し」
 事態は、核施設=原発の安全管理を維持基準の適用によって行うには、
 超音波探傷技術の精度は「信頼が置けない」と言うことを明示しています。

● 健全性評価の齟齬をも隠蔽する東京電力

  次に、制御棒破損事故に対する申し入れについて報告します。

  東京電力は、制御棒破損事故に対する解析が未だ終了していない、とし
 ました。 そして、私たちに対する報告を、現在進行している解析の結果報
 告のみで済まそうとしたのです。 しかし、保安院は、今年2月3日発ニュー
 スプレス中の 「1F6のひび発生ハフニウム板型制御棒17本は、寸法安
 定性に関わる技術基準には適合していないが、構造健全性は確保されて
 いる」 に対して、「東京電力の評価の妥当性は確認できない」 としていま
 す。
 
  東京電力は、事故ばかりではなく、その評価の過程をも隠そうとしたので
 す。 彼らのこの対応は厳しく糾されなければなりません。 双方の評価が
 違い、やり直した場合、当初の2つの評価そして再評価の3点の文書の公
 開と、経緯の詳細を明示することは、再発防止のために欠かすことはでき
 ません。                                 (斎藤記)